近年、配偶者や子どもがいない「お一人様」からの相続に関するご相談が増えています。
もしあなたが「お一人様」で、何の対策もせずに亡くなってしまった場合、残念ながらあなたの財産は最終的に国庫へ帰属することになります。
では、法的には婚姻関係がないけれど長年連れ添った大切なパートナーや、支援したい動物愛護団体などの公益法人に財産を遺したいと考える場合、どうすればよいのでしょうか。
今回は、次の2パターンを例に、財産を遺すための具体的な遺贈方法と、それに伴う法的な注意点についてご紹介します。
パターン1:婚姻していない長年のパートナーへ財産を遺す
法的に婚姻関係がない相手には、残念ながら相続権がありません。したがって、あなたが財産を確実に遺したいのであれば、必ず「遺言書」を作成する必要があります。特に、不備や紛失のリスクが少ない公正証書遺言を作成することを強くお勧めします。
金額別の注意点と対策
10万円~100万円
比較的少額の財産を遺す場合、遺贈された方にかかる税金はそれほど高額にならないことが多いでしょう。ただし、財産を受け取る側には、贈与税や相続税が課される可能性がある点はご認識ください。
1000万円以上
法定相続人ではないパートナーへの遺贈は、相続税の計算において税制上の特別な優遇が適用されません。そのため、税負担が大きくなる可能性があります。このようなケースでは、相続税の専門家である税理士に相談し、事前に適切な対策を検討することが非常に重要になります。
生前贈与も有効な選択肢の一つです。例えば、毎年計画的に財産を贈与していくことで、将来の相続財産を減らすことが可能です。ただし、具体的な贈与の方法や税務上の注意点については、必ず税理士にご相談ください。
また、パートナーを養子にすることで法的に法定相続人とすることも検討できますが、これには税務上のメリットだけでなく、法的な親子関係が生じることの意味(例:扶養義務)も考慮する必要があり、現実的には難しいケースも多いでしょう。
1億円以上
これほどの金額の財産を遺す場合は、単一の対策だけでなく、民事信託(家族信託)や生命保険の活用など、複数の手段を組み合わせて総合的な財産承継の計画を立てる必要があります。
- 民事信託は、あなたが生きているうちから財産の管理方法や、誰にいつ、どのように財産を渡すのかを明確に設定できる有効な手段です。信託契約の内容次第で、財産の柔軟な運用や承継が可能になります。
- 生命保険は、あなたが亡くなった際にパートナーが保険金を受け取るように設定すれば、生活資金や、必要となる税金の資金を確実に確保する有効な手段となります。ただし、生命保険の税務上の取り扱いについては複雑な場合があるため、必ず税理士にご確認ください。
パターン2:動物愛護団体など公益法人に遺す
公益法人への遺贈は、個人への遺贈と異なり、原則として非課税である点が大きなメリットです。ただし、遺贈を受け入れるかどうかは団体側の判断によりますので、受け取りを断られる可能性もゼロではありません。そのため、事前にその団体へ打診し、遺贈について相談しておくことが非常に重要です。
金額別の対応
10万円~100万円
少額の寄付であっても、団体によっては受け入れに関する手続きや体制が整っていないことがあります。あなたが指定寄付として使用目的を明確にしたり、遺贈がその団体の活動趣旨と合致しているかを確認したりすることで、スムーズな受け入れに繋がりやすくなります。
1000万円以上
多くの団体にとって、このレベルの寄付は大変喜ばれるでしょう。あなたの遺志を確実に実現するためには、遺言執行者をきちんと定め、手続きに漏れがないようにすることが重要です。場合によっては、寄付の使途を具体的に指定したり、団体と書面で合意書を交わしたりすることも有効です。
1億円以上
これほどの多額の寄付を検討する際には、遺贈を受ける団体の管理能力、会計の透明性、これまでの受け入れ実績などを慎重に確認する必要があります。遺贈寄付支援センターや日本財団といった専門機関を通じて、信頼できる団体選びや、複雑な契約書の作成支援を受けると安心です。
公益法人への遺贈が非課税となるのは、原則として「公益認定を受けた法人」に限られます。また、認定NPO法人も非課税の対象となる場合があります。しかし、公益認定を受けていない任意団体や、一般的なNPO法人などに遺贈する場合は、税金が発生する可能性もゼロではありません。遺贈を検討する前に、必ずその団体が「公益認定」を受けているか、あるいは「認定NPO法人」であるかを確認し、不安な場合は事前に税理士にご確認いただくことをお勧めします。
※当事務所では、遺言作成にあたり、相続税については提携している税理士と連携し、寄付先団体との事前調整や必要書類の整備までを含めたトータルサポートを提供しております。
遺言作成のすすめ
「想い」を形にし、「争族」を防ぎ、「課税リスク」を減らす。これが遺言の大きな役割です。特にお一人様にとっては、遺言書は「人生の最終メッセージ」であり、残された財産を社会に還元したり、大切な人へ託したりする唯一の法的な手段となります。
公正証書遺言であれば、私たち行政書士が関与し、あなたの希望が確実に実現できるよう支援します。
早めの準備と信頼できる専門家との連携が、あなたの希望を叶える第一歩です。

