近年、配偶者や子どもを持たずに生涯を過ごす「おひとり様」が増加しています。
自由で自立したライフスタイルを満喫できる一方で、人生の最期やその後についての備えが不十分だと、思わぬトラブルや不都合が残された人々に降りかかることもあります。
今回は、「おひとり様」が遺言や相続について生前に何の準備もしていなかった場合に起こりうる事態と、備えておくべきポイントについて解説します。
相続人がいないと、財産はどうなる?
「おひとり様」の中には、「私には家族もいないし、相続の心配はない」と考える方も少なくありません。
しかし、日本の法律では、たとえ自分が指定していなくても、一定の親族がいれば自動的に法定相続人となります。
たとえば、兄弟姉妹や甥姪などがこれに該当する場合もあります。
もし法定相続人が一人も存在しない場合、遺産は「特別縁故者」(内縁の配偶者や長年介護をしてくれた人など)に分与される可能性がありますが、家庭裁判所の判断が必要であり、必ずしも希望通りに財産が渡るとは限りません。
そして、特別縁故者すらいない場合、最終的に遺産は国庫に帰属します。
これは、自分の大切に築いてきた財産が、誰にも引き継がれずに消えてしまうことを意味します。
葬儀・埋葬は誰が決める?残された人の負担とは
遺言や死後事務委任契約がない場合、誰が葬儀を執り行うのか、どのように埋葬されるのかが不透明になります。
役所の方針で最低限の火葬と納骨が行われるケースもありますが、無縁仏として扱われることもあります。
さらに、たとえ遠縁の親族であっても、遺体の引き取りや遺品の整理などを求められる場合があり、心理的・経済的負担がかかることになります。
親族と疎遠であればあるほど、遺された人々が混乱する可能性が高まります。
相続トラブルの火種にも
「自分には財産が少ないから関係ない」と考えるのは危険です。
少額の財産であっても、法定相続人の間で争いが起きることは珍しくありません。
たとえば、複数の兄弟姉妹や甥姪が相続人になると、それぞれの利害が対立し、手続きが滞ったり、遺産分割協議がまとまらないこともあります。
また、亡くなった本人の意思が不明なため、「本当は〇〇さんに財産をあげたかったのでは」という推測が錯綜し、かえって感情的な対立を引き起こすケースも見られます。
さらにプラスの財産だけでなく、借金が相続されることもあります。
この場合、相続人が借金の肩代わりを回避するには相続放棄という手続きが必要になりますが、そもそも放棄できるという事実を知らない可能性もあります。
「おひとり様」こそ備えるべき理由
こうしたリスクを回避するために、ぜひ検討していただきたいのが「遺言書」と「死後事務委任契約」です。
遺言書を作成しておけば、自分の財産を誰にどのように引き継がせたいかを明確にできます。
特別縁故者に財産を遺したい場合や、動物愛護団体や福祉施設、公益団体などに寄付を希望する場合も、その意思を形にできます。
また、死後事務委任契約を結んでおくことで、葬儀や納骨、役所への届出、遺品整理などを第三者に正式に依頼することが可能です。
信頼できる知人や、専門家(行政書士や弁護士)に依頼しておくと安心です。
まとめ
「おひとり様」にとって、人生の最期をどのように迎えるか、そして自分の財産や想いをどう次世代に託すかは、大切な人生設計の一部です。
「家族がいないからこそ、準備の必要がない」のではなく、「家族がいないからこそ、自分の意志を明確にしておく必要がある」といえます。
何も準備をしていなければ、自分の意思が反映されないまま人生の幕が下り、残された人々に不安や負担を与えてしまうかもしれません。
元気な今こそ、自分の最期について考える時間を持ちましょう。
あなたの人生の集大成が、あなたらしく締めくくられるように。

